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【いきもの イキイキ 生き様 銘記】#4「ペタンココユビピンノ」

平身低頭は戦術だ

どうも。しがないフリーのピン芸人、小林ぼっちです。

 

売れてない芸人なんていう者は、自ら進んで社会の最下層に居座っているような人間ですから、基本的に習性としてみんなヘコヘコしています。

しかし、そのヘコりの上手さもこの世界では重要で、力のある業界人や売れてる先輩に好かれることは大幅なステップアップにつながるケースも多々あります。

その点ヘタクソな私は、持ち前の人見知りと不用な頑固さでこれまでも数々のチャンスを逃してきました・・・。

一方では“ヘコりの達人のような芸人もわんさかいて、先輩に年間で数十万円分も奢ってもらっているやつ、周囲から云百万の借金をして生活しているやつ、自分の部屋を持たずに知人の家を転々として暮らしているやつ、などなど・・・

凡人であれば胸ぐらを捕まれているはずの事態が苦笑いで済まされているというのは、何よりその人の高度なヘコりスキルの成せる業なのです。

ペタンココユビピンノ

というわけで、今日はとにかく腰の低さをとことん突き詰めたカニを紹介します。

■ペタンココユビピンノ 甲羅幅:7mm 体重:ほんのわずか 生息地:小笠原諸島沖合の海底

2018年に発表されたばかりである新種のこのカニは、体が小さいこともさることながら、ひたすらに体が平べったい! そもそも名前が「ペタンコ」から始まる生き物が他にいるでしょうか!?

 

2016年に小笠原群島の聟島(むこじま)列島付近で海洋調査が行われました。

海底ではフサゴカイ類というブヨブヨでニョロニョロのちょっぴりキモグロ系な生物が、自身の粘液を使って柔らかいストローのような管上の巣を作って暮らしています。ペタンココユビピンノはその巣の中から家主であるゴカイと共に発見されたのです。

そう、彼らは何を隠そう居候の身!

しかもなんと、オスメスのカップルで住まわせてもらっているという大胆さ。体はペラペラなのに太々しい・・・。

内径5mm程度しかないただでさえ狭苦しい住まいにもかかわらず、このカニカップルが追い出されることなく共生を許されている理由、それがまさに体がとにかく平べったいからなのです。

その薄い形状と得意の横歩きで、彼らはこの細長い空間をお互い妨げることなく上手に暮らしています。ゴカイとしも「やれやれまったく・・・」なんて言いつつ心を許してしまっている、そんな憎めない関係なのかもしれません。

ヘコヘコも貫けば誠意

ペタンココユビピンノは「内臓どうなってんの?」と笑ってしまうレベルにまで体を薄く進化させることで、住み心地のいい暮らしを他者から提供してもらうことに成功しています。

あなたの周りにも「何もしてないのに」「図々しいのに」なんだか許されて要領よく生きている調子のいい人間がいませんか? しかし、そんな人たちもよくよく観察してみると、実はそれ相応の努力や才能が見えてくるかもしれませんね。

 

一見すると媚びへつらったようなヘコヘコは敬遠されますが、かの秀吉公が信長の草履を温めて出世街道を駆け上がっていったように、突き詰めれば「誠意」として受け取られるのです!

私ももういい大人。そろそろ自分の力でしっかりと身を立てれるようにならなければなりません・・・そのために、まずはつまらない小さなプライドは捨てて、時には他人様のお力を拝借することも肝心。

その日のために、今からペタンココユビピンノばりの平身低頭な土下座を習得だ! ぜひぜひ、どんな些細な仕事のオファーでもお待ち申し上げております・・・!

文・イラスト:小林ぼっち

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