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【いきもの イキイキ 生き様 銘記】#3「セッケイカワゲラ」

寒いのが全部悪いんだ

どうも皆さま。しがないフリーのピン芸人、小林ぼっちでございます。

これを綴っている1月末、現時点で東京は連日凍えるような寒さが続いております。おそらくこれがアップされる2月中旬ごろには、さらなる極寒に見舞われていることでしょう。この調子だと8月ごろには南極並みの気温になっているかもしれません!

・・・恥じもせず、往年の季節ジョークを堂々と冒頭でかましてしまうこのキレの悪さ。それもこれも全部寒いのがいけないのです。

実際問題、人は寒いと身体機能が低下して体調も崩しやすくなります。また、冬季うつ病という病気が存在するように、寒さは心の具合まで悪化させてしまう恐ろしいものです。

だから今、もし君がなんだか気持ちがふさぎ込んでいるとしても、それはきっと寒さのせい。決してチョコがもらえないからではないぞ!大丈夫、待ってれば春は来るさ!!きっと・・・。

 

というわけで、この時期上手くいかないのは全部が全部寒さのせいなのです。本来なら人間も冬の間は冬眠すべきなのです。わざわざこの季節に働こうなんて滑稽の極みではありませんか。

セッケイカワゲラ

そんな怠惰まみれの思想を一蹴するような、なんともストイックな生き方をしている虫をご存知でしょうか?

■セッケイカワゲラ 体長:約1cm 体重:ほんのわずか 生息地:本州全土の河川

この黒くて地味で小さくて名前すら付いてなさそうな昆虫は、他の虫たちとは真逆の生態を有しています。

春、彼らは卵から孵るやいなや川底に潜って夏の間を眠って過ごし、秋になると川底に溜まった落ち葉などを食べて急成長します。そして冬の訪れとともに成虫になって一面雪景色の陸に上がってくるのです。

生命が湧きあふれる春夏にガッツリと引きこもり、わざわざ雪以外何もない冬に好んで姿を現すなんてどうしようもない陰キャ。快適温度は-10℃~10℃で、温かくされると痙攣して逆にまいってしまうという徹底ぶりです!

昔『忍たま乱太郎』で確かこんな先生いたな・・・

そんなセッケイカワゲラの毎日は、我々の期待を裏切らず、極めて朴訥(ぼくとつ)としています。

成虫になった彼らは、とにかく川の上流を目指してひたすらテクテクと歩き続けます。太陽と傾斜角度から方向を割り出し、雪上で見つけた有機物ならなんでも口にして鋭気を養いながら、気の遠くなるようなペースで一心不乱に雪の斜面を登るのです。そしてようやく、寒くて快適な上流域まで辿り着くとそこで交尾をし、雪溶けが始まった川の水中に卵を産みます。その卵は川の流れに乗って下流へと運ばれ、孵化する春先にはもとのスタート地点に戻っているというわけです。そうしてまたその子供たちも上流を目指し・・・

 

いや、卵流れないようにせぇよ!!!

小さな体でなんという壮大なボケ・・・。ずっと上流にいれば寒さも快適だろうし、なにより歩く時間をもっと他の有意義なことに費やせるであろうに。種族、世代、一生をかけたおっちょこちょい。もはや愛しく思えてきます。

コツコツタイプを侮るな

しかし、待てよ。そんな彼らの生き様を笑う資格が私にあっただろうか。

 

実はこのセッケイカワゲラ、冬の時期にのみ見かける変わった虫というキャラが功を奏し、俳句界では「雪虫」と言われ春の季語として用いられています。その界隈では風流なものとして知る人ぞ知る存在なのです。

一方で、私もまた芸人人生の冬の時代を彷徨う地味で名も無きちっぽけな存在。

8年くらいこの世界でやっていると、同じ境遇だと軽んじていたやつがある日突然、上流域に行ってしまうことなんて散々あります。しかし彼らもまた、実はコツコツと高みを目指して日々歩みを進めていたのです。

 

いやはや、反省。セッケイカワゲラをバカにしている場合ではない。むしろその羽も生えていない背中を見て学び、自分も頑張らなければ・・・!

そう心に固く誓いつつ、今週も布団の中からの更新失礼します。

文・イラスト 小林ぼっち

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