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【キムラケンジの3時のごはん】第6食「パフェの原価は追及するな」

私がカフェや喫茶店に入る時は、少し時間を潰したい時にコーヒーを1杯だけ頼むということが多い。そのため食事をとるということは稀で、ましてやパフェなどのデザートを頼むことは、全くと言っていいほどない。

と、少々かっこつけてカフェではコーヒーだけを嗜む紳士のように言ってしまったが、実のところ、私自身はパフェが大好きで、むしろ生クリームだけを渡されても美味しくいただいてしまうほどの甘党である。

そんな私がパフェを頼まない理由はたったひとつ。値段が高いからだ。

しっかりとしたパフェは食事と同じくらいの値段か、もしくはそれを上回ることもある。時には1,000円以上するものもあり、牛丼を2杯頼んでもおつりがくる、と考えてしまうのだ。30歳も半ばに差し掛かる社会人が、何をみみっちいことを言っているのだと言われるかもしれないが、こればかりは仕方がない。私はケチなのだ。

ましてや、あの容器にも少しモノ申したい。たくさん入っているように見せかけて、下の方はほっそりとしていて、しかも、コーンフレークで底上げされていることが多いではないか。

たしかに、甘いものばかり食べていると、コーンフレークの存在は非常に有難い。生クリームやアイスと絡まることによって広がる味のハーモニーを、否定する気はさらさらない。だがしかし、どうしても「カサマシのためじゃないのか?」という疑念もぬぐうことはできない。ご存知の通り、私はケチなのだ。

そうなってくると、パフェ自体の原価にも言及したくなる。例えばバナナパフェに、バナナ一本使うことはないだろう。せいぜい半分くらいか。それにコーンフレークやアイス、生クリーム、ちょっとしたスナック菓子のトッピングをしてみたとしても、せいぜい100円~200円以内に収まる計算になる。もちろん素材の良し悪しによって変わることは百も承知だ。それにしても、この原価に対してお金を払う気にはなれない。そう、私はケチなのだ。

(ただ、私自身の名誉のためにいうと、後輩と食事に行くときは、ほとんど私が会計を支払うようにしている。そのようなところでケチるような男では断じてない。自分自身に対する対価よりも、他人の喜ぶ顔に支払う対価——そういうものに価値を見出す人間だという自負がある)

そんなことを考えていると、ふとよぎったことがある。そんなにパフェの原価が高いと騒ぐならば、自分で作ってしまった方がいいだろうと。

私も一応、レシピ制作に携わる身ではある。食べたいものは自分で作ってみるのが道理である。そうとなれば、やることはひとつ。自分のためのパフェを作ることだ。基本的なパフェであれば材料はスーパーで全て揃う。なんなら、自分好みの大盛パフェにしたっていい。

ただ、この時点で薄々気付いていたことがもう一つある。先ほど原価計算がどうこうと言ったが、原価率の観点でいうと、コーヒーの方が明らかに低いのだ。それなのに私はパフェだけを悪者にして、コーヒーを嗜む自分を誇るかのような、おごり高ぶった物言いをしてしまった。これではあまりにもパフェに対する敬意に欠けるではないか。

そこまで思考を巡らせた私はスーパーへ向かう足を止め、駅前にあるパフェが名物のカフェを目指した。日本で有数のフルーツパーラーで修行をした方がオーナーをしているらしい。その時の私は、無意識に歩みが弾んでいた。

もしかしたら私は、自分がパフェを食べる口実をずっと探していたのかもしれない。値段がどうとかいいながら、本当はカフェでパフェが食べたくて仕方なかったのである。しかし、私とパフェを遮るものはもう何もない。

私は一番高いパフェを頼むと同時に、今週末に控えてる後輩との食事会をキャンセルする連絡をした。若者に払ってやるような金はもう残っていない。そう、私はケチなのである。

(終)

(レシピ)漢の 漢による 漢のための「どんぶりパフェ」

材料(漢1人前)

  • プリン…1個
  • バナナ…1本
  • ホイップクリーム…たくさん
  • チョコソース…たくさん
  • ポッキー…たくさん
  • コーンフレーク…わしづかみ

作り方

①大き目のどんぶりに、わしづかみにしたコーンフレークを敷き詰める。

②真ん中にプリンをおき、周りに生クリームを好きなだけ回しかける。

③斜め切りにしたバナナ、ポッキーを添えて、チョコソースを好きなだけかける。

結論

こんなに食べられないよ。


コラム/レシピ:キムラケンジ

イラスト:まつざきしおり

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