【キムラケンジの3時のごはん】第5食「人はなぜシメにラーメンを食べるのか」
「シメにラーメンでもいくか!」
お酒をたしなむ人であれば、誰しもがこんな状況に遭遇したことがあるだろう。しかし冷静に考えると、食事をした後にラーメンを食べるというのは、なかなかおかしな状況だ。もちろん、居酒屋で盛り上がって、もう少し話したいという気持ちもあるだろう。帰るのが名残惜しい、そんな夜もあるだろう。
だが、やはりもう一度冷静になって考えてほしい。居酒屋でたらふく飲んで食べて、もうお腹は満たされているはずだ。むしろ普段の夕食と比べたら、その時点でカロリー摂取量はオーバーしている。
私自身、30歳を過ぎたころから節制をするようになったものの、20代前半のころは目も当てられないような暴飲暴食生活だった。「ラーメンまでが飲み会です」と言い張っていたことがあった。とはいえそれではマズいと思い、シメのラーメンは食べないと決め、それがもうかれこれ数年続いている。我ながらかなり強靭な意志を持っていると思う。
しかし世界を見渡してみると、人はシメることを一向にやめない。今日もどこかで誰かが言っているだろう。「シメにラーメンでも行くか」と。お腹いっぱいだとかは関係ない。とにかく、何が何でもシメるのだ。
もはやこれは人体における永遠の謎と言っても過言ではない。しかしこのまま「それは人体の謎だよね」と思考を止めてしまうようなことはしたくない。その謎をひも解くべく、私はお酒とラーメンの関係について考えてみた。
まず、お酒を飲む=アルコール摂取をすると、肝臓がそれを分解処理しようと働きだす。アルコール自体は体にとっては「毒」であるので、何とかして分解しようとするのは間違いない。そこで必要となってくるのが麺に含まれる炭水化物であったり、スープに含まれる塩分だったりする。
だが我々は「アルコールを分解するために炭水化物や塩分を摂らなきゃ!」と思うことはない。ラーメンを食べたくなるのは、もう本能というか、遺伝子レベルで組み込まれているはずだ。事実、私がお酒を飲むようになったころ、もちろん「お酒の後はラーメン」という常識を知らなかった。にもかかわらず、家で1人でお酒をたしなみ、そのあとに「なんだかラーメンが食べたいなあ」とカップラーメンに手を伸ばしたものだ。
こうなってくるといよいよ、遺伝子レベルとかそういうレベルではなく、「シメのラーメン=世界の真理」と位置づけても差支えないのかと思ってきた。世界の真理を解き明かすだなんて大それたことは私には出来ない。私ごときに解決できるものではなかったのだ。
そして困ったことに、これだけ「シメのラーメン」について思いを馳せたのは久しぶりのことで、私はなんだか自分の体の中がソワソワし始めているのを感じている。偶然にも、今日は飲み会がある。一緒に行くのは、血気盛んな二十代前半の若い衆だ。
彼らはきっとこういうだろう。
「キムラさん、シメにラーメンいきましょう!」と。
私は「おいおい、もう俺の歳にはキツぜ~」といいながら、それはそれは幸せそうな顔で暖簾をくぐるに違いない。
(終)
(レシピ)おうちまで我慢したのにうっかり食べちゃう「月見しょうが醤油ラーメン」
材料(1人分)
- 中華麺…100g
- 生卵…1個
- チャーシュー/ナルト/メンマ/刻みネギ…適量
- 【A】
- 水…300ml
- 中華スープの素(創味シャンタン)…小さじ1
- 醤油…大さじ1
- ごま油…少々
- しょうがチューブ…1cm
作り方
①Aを小鍋に入れて沸騰したら生卵を割り入れ、半熟になるまで火にかける。
②たっぷりの湯(分量外)で茹でた中華麺と1を丼に盛りつけ、チャーシューやナルト、メンマやネギをお好みで盛りつける。
結論
呑んだあとにわざわざこれ作る人いるのかな。
コラム/レシピ:キムラケンジ
イラスト:まつざきしおり